PLEX PROGRAM REPORT

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「生命力のある建築」

2018年9月25日(火)

建築家

光嶋 裕介 氏

Yusuke Koshima

<PROFILE>

1979年、アメリカ・ニュージャージー州生まれ。建築家。一級建築士。早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年同大学院を卒業し、ドイツの建築設計事務所で働く。2008年帰国後、独立。2011年、内田樹氏の自宅兼道場《凱風館》を設計、若手建築家の登竜門である「SDレビュー」2011に入選。神戸大学で客員准教授、早稲田大学などで非常勤講師を務める。著書に『みんなの家。建築家一年生の初仕事』(アルテスパブリッシング)、『幻想都市風景』(羽鳥書店)、『建築武者修行―放課後のベルリン』(イースト・プレス)、『これからの建築―スケッチしながら考えた』(ミシマ社)、『建築という対話―僕はこうして家をつくる』(ちくまプリマー新書)など。

光嶋 裕介 氏

第1部:講義「生命力のある建築」

講義1

本日のプレックスプログラムは2年ぶり3回目のご登壇となる建築家の光嶋裕介さんに行っていただきます。光嶋さんは幼少時代を父親の仕事の関係でNYにて過ごし、青春時代を早稲田のある高田馬場で送った後、独ベルリンのザウアブルッフ・ハットン・アーキテクツで働くといった経歴を持っています。本日は学生時代からの想いと建築家になるまでとなってから、そして雑多なものの同居した空間、生命力のある空間をテーマに講義をしていただきます。二次元のドローイング、三次元の空間、それに加えた言葉、様々なフォーマットで想いを発信する光嶋さんの授業、楽しみです。

講義2

光嶋さんは師である石山修武氏に「交換を超えた豊かさ」を学んだと言います。例えば70万円のコースを受け70万の元を取るため一級建築士の資格を取ってやろうという交換行為ではなく、自分の中に思考の種の様なものを植えつけ、学びを増幅していく姿勢が大切であると説いています。そして「何かを作るということは自分の中にあるものをねじり出すのではなく、出しながら出た瞬間にいいか悪いかを判断している」とし、表現することでわかっていくことやこの点とこの点が結びつくということに気づく事ができる行為も思考の種を植えることによって可能になると語っています。

講義3

光嶋さんの話には常に「身体化」というキーワードが内在します。空間の計り知れない何かを常に身体で感じることで空間を理解できる。光嶋さんにとってその行為がスケッチであり、空間と相撲を取るように対話をすることで数値化できない情報を感じ取っているそうです。光嶋さんはグッゲンハイム美術館とアルハンブラ宮殿を比較しスケッチで感じ取った情報について解説していきます。空間にはそこにあるべき必然性が必要で後者にはそれがあるが前者にはないのでそこに差があると語っています。そして時代や場所によっての解釈や物差しの変化に対応していくために発信しながら物事を考え、常に情報をアップデートすることが大切であると説いています。

講義4

光嶋さんの建築デビュー作は思想家内田樹氏の道場兼邸宅の凱風館になります。オファーを受けた際のテーマは「宴会のできる武家屋敷」で雑多なものを同居させるにはどうしたらいいのかを考え地域にフィットした外観を目指したと語っています。また内田氏の影響で合気道を始め、数値化できない情報を感じるための身体感覚を養っているそうです。合気道は「他者と比べることをしない」といったもので競争という概念を持たず、相手と同化することを目指すものであり、「相手と比較しない豊かさ」を知ることができたと語っています。光嶋さんは身体感覚を大切にしながら、どうなるかわからない所にちょっとした未来を提案しクライアントや職人という他者性を交え、アジャストしながらものづくりをするのが「生命力のある建築」であり、今最もやりたいことであると語っています。

第2部:ワークショップ「現代におけるお墓のあり方」

ワークショップ1

ここからはワークショップに移ります。今回のお題は「現代におけるお墓の在り方とは」となります。学生たちには「死者を弔うことについて」や「死者と一緒に過ごす在り方」を言葉とセットにして具体的な形として提案してもらいます。核家族化し共同体の考え方が変わっていく中、何がみんなにとってリアルなお墓なのかを考えるこのワークショップ。これからの未来に考えていくべき大切な課題であるお墓に対して、集まった学生たちの集中力が高まっているのを感じます。何人かのグループに分かれ、各グループでのシンキングタイムに入ります。

ワークショップ2

シンキングタイムが終わり、各グループの発表に移ります。最初のグループの考えたお墓は「みんなが思わず集まる明るいお墓のオブジェ」です。夜中のお墓は怖い等あまり良いイメージがないということでイルミネーションを付けた木を置くといった内容です。この案に対しお墓を墓足らしめているものは墓石の下に遺骨が安置されていることであるが、この案は遺骨に対してどういう考えがあるかとの光嶋さんからの鋭い指摘が入りました。グループの総意として、遺骨の有無はあまり重要ではなくお墓というシンボルに対して人は集うのであり、命のメタファーとなる樹木を選択したとの回答をしていました。光嶋さんが積極的にグループに関わっていくことで会場に熱気が生まれているのが伝わってきます。

ワークショップ3

その他にも各グループが面白い案を発表してきます。中でも「遺骨ではなく生活空間をそのまま残す」と「50~100年経ったら消滅するお墓」は魅力的な案でした。その人の骨を残すのではなくその人が息づいている空間を残すというアイディアは実施可能性には不安があるのも事実ですが、骨よりもその人を感じられるとして好感を持って受け入れられていました。また消滅するお墓は広島出身の方が豪雨により近所の方の墓が流されてしまったのを見てすごく悲しんだという経験を元にアイディアを出していました。お墓の管理をするというより、経年劣化を感じていくというアイディアに光嶋さんは良い意味で忘れていくことは必要かもしれないとお墓を違う視点から捉えた案を評価されていました。

総評

最後に光嶋さんからメッセージをいただきます。「デザインや空間など新しい分野に挑戦している皆さんだと思いますが、それはすぐには花が咲かないかもしれない。しかし種を植えた土の栄養は必ず自分の歩んできた経験が下支えしてくれているはずなのでそこを卑下するのではなく自信を持って、自分のいいと思うことを自分の身体に聞いて自分の心が思うことをやってほしい。好きなことをやるということは自然に努力しているということだし、自然に努力をすれば実力もつく。他人と安易に比較することをやめ、自分の心の声に耳を傾けつつ他者とも関係しながら頑張ってください。」光嶋さん本日は貴重かつ濃い時間をありがとうございました!

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