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「ロボットデザインとIoT」

2018年6月28日(木)

フラワーロボティクス代表
ロボットデザイナー

松井 龍哉 氏

Tatsuya Matsui

<PROFILE>

1969年東京生まれ。91年日本大学芸術学部卒業後、丹下健三・都市・建築設計研究所を経て渡仏。科学技術振興事業団にてヒューマノイドロボット「PINO」などのデザインに携わる。2001年フラワー・ロボティクス社を設立。ヒューマノイドロボット「Posy」「Palette」などを自社開発。現在、自律移動型家庭用ロボット「Patin」を開発中。2017年よりヨーロッパ各地の美術館/博物館にて開催される巡回展”Hello, Robot”展に出展中。ニューヨーク近代美術館、ベネチアビエンナーレ、ルーヴル美術館、パリ装飾芸術美術館等でロボットの展示も実施。iFデザイン賞(ドイツ)red dotデザイン賞(ドイツ)など受賞多数、日本大学藝術学部客員教授、グッドデザイン賞審査委員(2007年から2014年)。

松井 龍哉 氏

第1部:講義「ロボットデザイン」

講義1

本日は四回目のご登壇となるロボットデザイナーの松井龍哉さんをお迎えしてお送りします。世界広しといえど、とても珍しいロボットデザイナー。その名の通り「ロボット」をデザインするお仕事ですが、デザインを勉強している皆さんでも実生活の中で、どの様に役立つかいまいちピンとこない人も多いかと思います。そこで今回は、松井さん自身がどのような経緯でロボットを創るに至ったかを順を追って説明しながらの講義のスタートとなりました。

講義2

最初は松井さんが大学時代に研究をしていた、世界で初めてのデザイン教育機関であるバウハウスのお話からです。バウハウスでは建築が重んじられており、松井さん自身も丹下健三事務所で働くなど、建築に関わっていました。ですが建築家になりたいと思ったことはなく、ネットワーク抜きに21世紀のデザインは語れないと考え、渡仏しコンピュータサイエンスを学びます。その後、米系企業にてインターフェイスデザインを担当しましたが、ふと松井さんは完全主義になりがちなこの分野にリアリティを求めるようになります。そこで建築という人間の生活に直接関わる現実とネットワークとの間に何か見出せないかと考えた時、ロボットというワードへ辿りついたと語っています。ボディは実空間にあるが、情報としてはネットワーククラウド内にあるロボットという概念に松井さんは強い可能性を抱いているのが伝わってきます。

講義3

松井さんは2001年にフラワーロボティクス(株)を創業します。この頃はロボットというと漫画ですか?という感じで社会的には殆ど空想に近い捉えられ方をしていたそうです。松井さんは22世紀に評価されるものをモットーに、近代でいう車、コンピュータ等の新しい産業になるものを創ることが大切だと説いています。そして現代でのスマートフォンの様にロボットを日常の風景にすることがフラワーロボティクス(株)の企業理念であるとしています。自身の製作した「Polaris」、「Palette」を参考に社会にインパクトを与えることの大切さや量産体制の難しさなど興味深いお話を語ってくださいました。松井さんのお話に熱が帯びてきたところで続いてロボットについての解説が始まります。

講義4

ロボットはその歴史の中で役割が愛玩用と産業用の二つに大分できると松井さんは言います。また定義としてセンサー、知能・制御系、駆動系の三つの要素技術があるものとしています。松井さんは自身のデザイン対象をロボットの自律性としています。ロボットが環境の中から情報を自ら取捨選択し、行動基準をつくる「自律型ロボット」の設計思想を基に人間とロボットそれぞれの環境の共通項を見つけ人の生活に自然と共存させることがロボットデザインの本質であるということを「Patin」、「Robocup」のお話を混じえながら語ってくださったところで前半部は終了となりました。

第2部:ワークショップ「ひとまとまりの価値」

ワークショップ1

ここからはワークショップのスタートです。お題は現代のIoT時代を踏まえての「ひとまとまりの価値」。完全に新しいものをつくることは少なくなっており、今あるものの中で複数の機能をある価値に基づいて繋げていくことが大切ということで、学生の皆さんに考えて発表していただきます!5〜6人程のチームに分かれてのディスカッションタイムがスタートです。

ワークショップ2

あっという間に時間が過ぎ、発表と講評が始まります。いくつかのチームの発表を紹介します。最初は「ただいま!から始まる家事」。ドアノブが人の健康、精神状態を察知しその人にあった料理を用意したり、アロマを焚いたりするというアイディアです。またドア自体が着ている服を解析し、服の洗濯方法や明日何を着ていけばよいかを提案してくれるといった面白い案でした。続いては「冷蔵庫内の可視化」です。スマホで冷蔵庫内を管理することができ、食材などの購入履歴からのレコメンド機能を持ち、人がどんな食材を買ってどんな料理を作っているかをビッグデータ化し新商品開発や新しいニーズの発見などが期待できるといったものでした。

ワークショップ3

まだまだ発表は続きます。次は「家と家で繋がる人々」。こちらは物理的な距離を解決するアイディアになりました。例えば帰省しなくてもディスプレイを通じてお互いが本当にその場に居合わせている様な環境を提供するといった案でした。こちらは松井さんから8Kテレビを使い、家同士のハードウェアを連携させて相手の家の音や照明の加減を連動させたり、相手の空気がこっちまで流れてくる技術はもう存在しているのでそれを使うと面白くなりそうとのご指摘をいただきました。続いては「カメレオンハウス」。壁紙の材質が変化したり、色んな国の雰囲気をディスプレイで再現して、その家に住む人の体験を変えるといったものとなります。皆さん少ない時間の中で懸命にアイディアを出し合う姿が印象的でした!

総評

ワークショップの発表と講評が終わり、松井さんからの総評です。
「今のマーケットに合わせていくというよりは、少し先の未来を予測してデザインすること。綺麗に丁寧にモノづくりをすることも大事ではあるが、これから起こるであろう何かに対して新しいモノをデザインすることがデザイナーに求められる重要な能力になってくると思います。マーケティングからだけでなく、ある予測を基に新しいアイディアでモノづくりをするということを少しづつ考えていっていただければいいかなと思います。」松井さん本日はありがとうございました!

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