プレックスプログラム レポート

  • クリエイティブワークショップ

「ジャンルレス・ボーダーレス」

2013年9月22日(日)

クリエイティブディレクター

中野 一男 氏

Kazuo Nakano

<PROFILE>

大学卒業後、広告制作会社にてグラフィックデザイナーとして従事。 企業のポスター、アニュアルレポート、CI/VIなどプロモーションツールのデザインを担当。 その後、フリーランスとして活動。紙媒体を中心にスタートし、Webデザイン、3DCGデザイン、写真、映像と様々なメディアでの表現を行う。現在は上記クリエイティブワークを行いつつ、Webコンテンツのプランニング、電子書籍のプランニング、空間デザインなど各種プランニング業務やクリエイティブソフトのチュートリアルの執筆やデモンストレーション、デザイン専門学校において講師業務なども行う。また上記業務を個人で対応するとともに、フリーランスのクリエイターによる制作組織である『Project BB』を発足および運営を行う。

中野 一男 氏

第1部:トークショー「ジャンルレス・ボーダーレス」

講義1

本日のプレックスプログラムは、当校でも講師として教鞭を取られているクリエイティブディレクター、中野一男さんをお迎えしてお送りします。ご自身をカリスマクリエイターではなく、普通のデザイナーだという中野さん。「新しいものを常に見てしまう」との言葉の通り、フリーランス転向後はクライアントがCGに興味があると聞けばその帰りにソフトを買って勉強し、映像に関してもまず「できます」と言ってから、映像関係の友人に聞いて何も知らないところから制作を始めたそうです。

講義2

「デザイナーが面白いプランニングをしちゃいけないというルールはない」との言葉の通り、手がけたアウディジャパンのプランニングでは、フィルムを店舗のガラス貼りに映像で流すプロモーションや、数十台のiPadを効果的に用いるなど、新しい技術を積極的に取り入れる中野さんらしいアイディアが、随所に見られました。「生粋のクリエイターの本道から言ったら邪道かもしれないけど、アメーバでもいいと思う。自分がやりたいことが常に変化してゆく時代があってもいい。ただ、やりたいことができたら思いっきり舵を振ったほうがうまくいく」という経験に基づいたアドバイスには強い説得力があります。

講義3

続いて『デザイナーに才能は必要か?』という、学生とって非常に関心のあるテーマでは「普通であることがデザイナーにとって一番必要な感覚」との意外な答えが。「未熟な人でもベテランでも、デザイナーっていうのはどっかで自分の感性を見せつけたいところがある。でも使う人は一般の人なので、まず目線をそこまで下げるのが大事。でもそれだけじゃ面白くないから、そこから遊んでゆくのがデザイン」普通のデザイナーを自称する中野さんの、デザインを使う人の視点に立った考えが窺えます。また「いいデザイナーになりたかったら、いい普通人になりなさいと先輩からよく言われていた」というの言葉に、新たな発見があった受講生も多かったのではないでしょうか。

講義4

Adobeのイベントで作成されたデモ作品を例に、実際に作品の背景のテクスチャで使われた水彩絵の具で塗られた画用紙が紹介されます。「にじみとか、ハネとか、こういったものを作っておくだけで、ものすごくグラフィックの幅が広がる」という解説の中で、「古い紙の質感が欲しい時はコピー用紙を醤油で煮て、乾かして、コーヒーで煮て・・・」という驚きの手法も紹介されました。「デザイナーというのはこういうことを考えている間が一番楽しい」という言葉と共に「Photoshopで嘘のレンガを作るくらいなら、実際に外に出てレンガの写真を撮りに行くほうがいい」と作業をパソコンで完結させようとしがちな学生に対するご指摘も頂きました。

第2部:ワークショップ「ジャパニーズモダンを世界に知ってもらおう」

ワークショップ1

ワークショップは「2020年の東京オリンピックにあたって、パッケージデザインで日本の和を世界に知ってもらう」というテーマで、プロモーションや商品展開までの戦略をチームで考えます。1つめの新商品として考案したレトルト茶葉のプレゼンをしたチームは「ちゃんとプロジェクトを組んでメーカーにビジネスモデルとして売り込めば、もしかしたら7年後には公式フードになってるかもしれない。デザインってそういうものだから」といきなりの高評価。2チーム目の日本庭園の風景をキットとしてパッケージングした商品も「発表する場とリンクして二次的なビジネスにできれば、庭を売るって発想は非常に面白い」と意外性のある発想が評価されました。

ワークショップ2

続いては日本の染め物の端切れを使ったハンカチをプレゼンするチーム。パッケージに筆ペンで手書きされた文字が「まずデジタルフォントで文字を選びがちだけど、手書きの暖かみは出ない。こういった思考がデザイナーの思考」と先ほどの講義を早速実践した形が評価されました。4チーム目は、オリンピックの応援に使える、顔文字が描かれた扇子という商品でしたが「扇子というアイディアはとてもいいけど、機能とか販売方法をもっと工夫する必要がある。あと7年後も顔文字って流行ってるかな」という、総合的な見地での指摘がありました。

ワークショップ3

日本酒をお猪口や畳のコースターとパッケージングしたチームは、店舗にも力を入れてプレゼンを展開しました。中野さんからは「商品は面白いけど、あとはパッケージングとコストライン」とやはり総合力を問われます。最後は、オリンピック応援に使える、隈取りのフェイスペイントをプレゼンするチーム。ビジュアル化やその後の商品展開など細かく練られた案に「これもビジネスになる。本当に企画書を作って売り込んでみたらいい」との評価が。「シールのほうがいいんじゃ?」と他のチームから、新しいアイディアが提案され「そこも視野に・・・」とその場で採用される一面も。

総評

6チーム全ての発表が終わり「この短時間でこれだけ面白いアイディア、発想がでてくることに本当に驚きました。現場でもこれだけの瞬発力はなかなか出ない」という中野さんの率直な感想が。短時間で全員がまとまって作品を作り上げた、プレックスプログラム受講生の意識の高さにも驚かれたようです。最後に「皆さんも十分クリエイターとしての素質はあると思いました。あとはそれをもっとビジュアル化する力をつけて、プレゼン能力を高めていけばちゃんと仕事になってゆくと思います」という総評を頂きました。中野先生、本日はありがとうございました!

Text by 東京デザインプレックス研究所修了生
久保隆平

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