プレックスプログラム レポート

  • クリエイティブワークショップ

「はじめて考えるときのように」

2012年12月1日(土)

建築家

谷尻 誠 氏

Makoto Tanijiri

<PROFILE>

建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」代表。広島と東京を拠点に、数々の住宅や商空間、展示会場などに関する企画・設計、ランドスケープやインテリアのデザイン等を手がける。
代表作は、毘沙門の家、豊前の家、他多数。09年JCDデザインアワード銀賞ほか国内外で受賞多数。2012年著作「1000%の建築」刊行 特技は建築とバスケットボール。1974年 広島県生まれ 1994年穴吹デザイン専門学校卒業 1994年~1999年本兼建築設計事務所 1999年~2000年HAL建築工房 2000年建築設計事務所Suppose design office 設立 現在 穴吹デザイン専門学校非常勤講師 広島女学院大学 客員教授

谷尻 誠 氏

第1部:トークショー「THINK そもそも、これってなんだろう?」

講義1

 「どうでもいいことを深く考えることが好き」と開口一番に語ってくれた谷尻誠さんは、住宅、商業空間、会場構成、ランドスケープ、プロダクト、アートのインスタレーションなど、仕事の範囲は多岐にわたる、注目の若手建築家の一人です。最近では、東京ミッドタウンで開催された「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2012」で、高さ約4メートル、直径約10メートルのスケールの巨大なジャングルジム、「MOUNTAIN GYM」を設計したことでも話題になりました。

講義2

今回のプレックスプログラムは、新たなデザインを創造する考え方について触れていきます。以下の話からスタートです。
「世の中にある全てのものには名前がついていて、機能を支配している。だからいったん名前を外して『これって何をするものだろう?』と常に考えているという。例えば、“コップ”。液体を注いで飲むことに使う道具だけど、名前をいったん取ってみると、金魚を飼う“水槽”になったり、花を挿せば“花瓶”になる。逆に、名前をつけることで用途を規定することができる」

講義3

つづいては谷尻さんが広島の事務所の上階に設けた様々な方をゲストにお呼びして繰り広げられる名前のない空間で行われるイベント『THINK』。人が集まってコーヒーを飲めばそこはカフェになり、展覧会をやればギャラリーになる。歌をうたえばライブスペースになる。何と何があれば機能として決定づけられるのか、空間を扱う建築家としての信念がそこにあるように思われます。

講義4

コンペは“考える筋トレ”だという。コンペでは、この建築物は何をするもので、どのような役割をはたすのか、抱えている問題は何なのか、もっとこうするべきではないかと考え抜き、その思いを建築意匠として提案する。審査員のウケを狙ったコンサバなプランにすれば容易く受注できるかもしれなかったが、信念を貫いた結果、幾度となく負けが続きました。それでも突き通した信念が、ようやく社会から評価されるようになってきたと言われます。

講義5

谷尻さんの“考える力”のルーツはどこからくるのか。それは幼少時代を過ごした長屋にあったといいます。
「お風呂は五右衛門風呂、雨が降れば傘をさして台所まで行かなければならなかったり、とても不便な家でした。現代は、より快適な暮らしを求めるが故に、その中で不便なことを発見してしまう。逆に、圧倒的に不便な環境であれば、どうやって便利になるか工夫するしかない。不便さはクリエイティブの起源じゃないかな」 
リモコン1つで何でも完了できる生活と対極にいたことが、当たり前を当たり前と思わない考え方を生んだようです。

第2部:ワークショップ「アイデアブレインストーミング」

ワークショップ1

ワークショップでは、仕事でアイディア出しに煮詰まった時に実際に行っているブレインストーミングを5人グループで行いました。
まず、縦4列×横5列のマス目に、“自然”から連想されるものを縦1列描き、回していく。次にそれらから連想されるもの描く。一巡してみると“自然”とは一見、無関係なものが出ていても、紐解いていくとそこには関係性があったり、グループ内でも自分には思いつかなかった発想に触れることができたようです。

ワークショップ2

グループによっては“マザーテレサ”や“井上陽水”など、突拍子もない言葉が連想され、谷尻さんもそれぞれの意外性に興味深々でした。自分が書いた絵や言葉から意外なものに発展していることを知り、発想の無限性を実感する。このように、言葉を様々な方向から考える(解体する)ことで、より多くのアイディアが生みだされるのを受講者たちは実感しました。

講評

新しいことに価値があるという。それは、無から有を作り上げることではなく、無意識を意識化することで生まれるといいます。
「普段何気なく通り過ぎてしまう、どうでもいいことでも、これは何をするものだろう? 何と何があれば用途を規定されるのか? と考え続けることが大事で、頭の中に散りばめた点がいくつか結びつき、線となり、カタチになったとき、新しい価値を見出すと思います」 
谷尻さんの一つひとつの言葉は受講者の頭の中で線となって、THINKという新しい大きな星座を描けた時間になりました。

Text by 編集&ライティングコース
村田知子

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